歩行や排泄を困難にさせるヘルニアは、ダックスやビーグルに多い病気です。最新の研究で「ヘルニアは再生医療で治るかもしれない」とわかりました。なんと日本大学との共同チームが犬の神経細胞の作製に成功したのです。
犬のヘルニアについて|症状に苦しむ子はたくさんいる
ヘルニアは人だけでなく犬も発症します。ダックスやビーグルといった胴が長く足の短い犬に多い病気です。ヘルニアは背骨にある脊椎が突出し、中枢神経を圧迫することで起こります。脊椎はクッションの役割を担っています。
愛犬が歩かなくなり
痙攣したりして
しかし食欲満点
病院行ったらヘルニアとのこと
痩せるようにしなさいと
犬も言われたようだ‼️ pic.twitter.com/1Lxej2EFfu— 農村BASE (@BASE97126970) July 19, 2020
https://twitter.com/maki94700610/status/1286817529277501441
うちのペットの犬がヘルニア?で足が動かなくなりそう、、、
治りますように— 禅夜 (@Gx28753597) July 23, 2020
法事が終わり、やれやれと思ってたら実家の犬が椎間板ヘルニアで明日手術する事になった。
今なら80%で治るらしいけど、最悪後ろ足が不全になるらしい。一昨日まで元気に走り回ってただけに何とかしてやりたい。
— でんた@駄楽屋 (@DARAKUYA) July 26, 2020
うちの老犬がヘルニアなっちゃって辛そうで辛い
— ばな (@banasyo1) July 26, 2020
ヘルニアを発症する犬は多く、投薬治療でうまくいくケースもあります。しかし薬で治らない場合は、手術による治療や車いすの生活を余儀なくされます。そんな重篤な症状も懸念されているヘルニアですが、治る日もそう遠くはないかもしれません。
犬のヘルニアはDFAT(脱分化脂肪細胞)で治るかもしれない
日本大学生物資源科学部獣医学科の元教授で、現日本どうぶつ先進医療研究所所長の杉谷博士氏と中野令氏らのチームが、「犬の神経細胞は作れる」と発表したのです。2012年ごろ中野氏が「神経の損傷で身体が不自由になった動物を助けたい」と思ったことがきっかけでした。
DFATを様々の方法で分化誘導すると脂肪細胞に細分化するだけでなく、骨芽細胞および神経系細胞などに分化した。
そして彼らは「DFAT(脱分化脂肪細胞)」で新しい神経細胞を作れることを発見。
DFATを新しい神経細胞にするには?
DFATから神経細胞を作るには、次の工程が必要です。
DFATより新しい神経細胞を作る方法
1.DFATにレチノイン酸を加える
2.1を長期間培養する
3.新しい神経細胞に変わる
DFATから神経細胞を作れば、遺伝子操作が不要なので、従来の治療より簡単になるそう。作られた神経細胞は、神経細胞としての働きをすることも研究で確認されています。
DFATとは何か、どうやって作られるのか?
この研究でのキーワードは「DFAT」という細胞です。DFATは日本大学・教授の加野浩一郎氏と松本太郎氏が特許を取得した線維芽細胞に似たものです。
線維芽細胞は古い細胞に変わりどんどんと増える新しい細胞のこと。イモリのしっぽを切断しても再び生えるのは、線維芽細胞が関係しています。
参考:https://natucli.com/column/fibroblasts/about01/
DFAT細胞の作製効率、増殖および多分化能は、犬種および年齢の影響はいずれにおいても認められなかった。
DFATは犬種や年齢に影響がなく、不純物も少ないので治療時に扱いやすそう。
DFATはどうやって作製されるの?
終末分化した成熟脂肪細胞を脱分化誘導することによって、脱分化脂肪細胞(DFAT:de-differentiated from fat cells)を樹立した。
DFATの作り方を簡単に説明します。
DFATの作製方法
1.犬から脂肪組織を採取する
・腹腔内をカメラで見ながら、肝臓や脂肪組織の一部を鉗子(かんし)で採取する。
2.DFATを採取する
・採取した組織をリン酸緩衝生理食塩水で3回洗う。
・組織を眼科用のハサミ小さく切り酵素処理を行う。
・DFATだけを分離させる。
参考:https://stemcell-hd.com/jp/wp-content/uploads/pdf/animal_medicaltreatment.pdf
つまり犬の脂肪組織からDFATは取れるのです。さらにこのDFATに手を加えると、新しい神経細胞が作られるわけです。
DFATは犬のヘルニアや人間の再生医療に役立つ
ヘルニアの重症化は犬の活動を制限させ、ストレスの原因となります。もしDFATによる神経細胞の作製研究が進めば、ヘルニアに苦しむ犬を助けられるでしょう。
車いす生活の子もまた歩ける日がくるかもしれません。そしてDFATは犬のほか、人間の神経系の疾患治療への応用も期待されています。今後の研究に期待します。