犬の嗅覚が優れていることは周知の事実かと思いますが、なんとその嗅覚を利用し、新型ウイルス感染者を発見する方法が期待されているのです。イギリスやドイツをはじめ各国でその研究は進められています。2020年7月30日時点で発表されている研究について紹介します。
イギリス:犬は1時間で250人も判断できると予想
2020年3月末、イギリスのロンドン大学衛生熱帯医学大学院のグループとダラム大学のグループは、「医療探知犬を用いた新型コロナウイルス感染者の発見」に関する可能性を発表。
イギリスの研究者らは過去に、犬によるマラリア患者を発見する実験にも成功しています。さらにほかの研究者らは、犬で肺がん患者も発見しています。
イギリスではどのような取り組みを行っているのか?
ロンドン大学の研究者らは、次の研究やトレーニングを行っています。
1.新型コロナウイルス感染者のにおいのサンプルを犬にかがせる
2.感染者を見つけるトレーニングを受けさせる
成功すれば2ヶ月弱の訓練で、呼吸器疾患を検出できるそう。1時間に250人のにおいをかぎわける能力、空港での実施が期待されています。
参考:https://www.medicalnewstoday.com/articles/could-dogs-help-detect-covid-19
ドイツ:犬が94%の確率でコロナ感染者を発見する
ドイツのハノーバー大学でも、犬を使ったコロナ感染者のスクリーニング研究が進められています。ハノーバー大学のチームは犬にほぼ訓練をさせませんでしたが、高い検出率に成功しました。
ちなみにハノーバー大学の研究者らは、8匹のスニファー犬で実施。1週間ウイルスの識別訓練をさせたそうです。犬が公共でスクリーニングをし、ウイルス拡大を遅らせるのに役立つと期待されています。
ドイツのハノーバー大学が実証した結果とは?
1,012個の唾液と気管気管支のサンプルを集め、SARS-CoV-2を犬に見つけさせます。SARS-CoV-2は病原性が高いとされる新型コロナウイルスの一つ。サンプルは無作為に選ぶため、犬や飼い主、研究者はどれが陽性か知りません。
犬を使ったSARS-CoV-2の検出結果
・陽性サンプル(157個が正解、30個が間違い)
・陰性サンプル(792個が正解、33個が間違い)
この結果から研究者らは94%の確率で識別できたと結果を出しました。研究者のひとりホルガー・フォルク教授は「将来の研究に役立つ基盤ができた」と述べています。
参考:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202006/566046.html
https://tekdeeps.com/specially-trained-dogs-detect-coronavirus-with-94-success-rate-neews/
チリ:現在4匹の警察犬を訓練中。9月には始動予定
引用:https://www.businessinsider.com/photos-the-sniffer-dogs-being-trained-to-detect-the-coronavirus-2020-7
チリのサンティアゴでは、国家警察とカトリック大学が共同で犬の訓練を進めています。9月までには犬を使ってコロナ感染者を発見するのが目標です。チリのカラビネロスドッグトレーニングスクールでは、4匹の犬を対象に以下のトレーニングが行われています。
1.症状が出そうな人の脇にパッチを2時間置く
2.パッチのにおい犬に検出させる
4匹の犬はトレーニングに励んでいます。
フランス:警察犬にコロナウイルスのにおいを覚えさせ訓練中
引用:https://www.businessinsider.com/photos-the-sniffer-dogs-being-trained-to-detect-the-coronavirus-2020-7
2020年4月30日、地中海にあるフランスのコルシカ島アジャクシオでは、消防士が新型コロナウイルスに感染した組織片を犬に発見させる訓練を行いました。またフランスの警察でもトレーニングは行われています。そのトレーニング法は以下の通りです。
1.警察官がウイルスを布に付着させる
2.コーンの中に布を入れる
3.犬に探知させ、見つけたら警察官に報告
フランスでは犬に訓練させる用に、ウイルスのサンプルが保管されているそうです。
犬の嗅覚で新型コロナウイルスの感染は防ぐのは難しい?
各国が犬を使った新型コロナウイルスの探知について研究や訓練を進めています。改めて犬の嗅覚の鋭さに驚かされました。
デューク大学の進化人類学者のブライアン・ヘア氏は「コロナウイルスには7種類あり、検出が難しい」と解説します。感染者を確実に見つけることは難しいかもしれませんが、今後の研究に期待したいと思います。