「犬は思春期の子供を幸せにする!」麻布大学教授らが発表。2,584世帯の10~12歳を追跡調査


「犬は私たちに癒しを与えてくれる存在」と感じている人は多いのではないでしょうか。麻布大学と東京都医学総合研究所などの研究チームが、「犬を飼っている家庭では思春期の子供の幸福度が上がる」と発表しました。研究内容や結果に対する専門家の見解をまとめます。

一体どんな研究が行われたのか?気になる結果も含めて紹介

同研究は麻布大獣医学部の茂木一孝教授をはじめ、東京都医学総合研究所や東京大学医学部付属病院の研究院らによって実施されました。研究では2012年より続けている調査内容が用いられました。無作為で選ばれた東京都の世田谷区・調布市・三鷹市の家庭に、アンケートやインタビューを通じて家庭環境を調査したもの。

WHOの指標ウェルビーイングを使って幸福度を調べる

調査した家庭のうち10歳の子供のいる2,584家庭を選出し、イヌ・ネコの飼育状況や10~12歳の期間における幸福度を数値化。WHOが推進するウェルビーイングを使い過去2週間の幸福度を0~5の6段階で評価。ウェルビーイングは身体・精神・社会的に健全かどうかの指標です。

そして調査対象の家庭を以下3つのグループにわけます。
1.犬だけを飼っている
2.猫だけを飼っている
3.犬も猫も飼っていない

犬と猫の両方を飼っている家庭は少なかったため調査対象から除外しました。

犬を飼うことは子供の幸福度に関係していた

以下は、調査対象の子供におけるウェルビーイングのスコア推移のグラフです。

※緑色■:犬だけを飼っている、赤色▲:猫だけを飼っている、水色●:犬も猫も飼っていない

過去の研究で人の幸福度は生涯にわたりU字曲線を描き、10~12歳ごろから35歳ほどまで下降すると発表されています。しかし3つのグループのうち、犬だけを飼っている家庭は10~12歳の幸福度の下降がもっともゆるやかでした。

子供の性別や兄弟構成、親の年齢や年収の影響を排除しても同じ結果となりました。犬の飼育で幸福度が改善されることは、統計学的にはじめて実証されたそうです。

この調査結果に対する研究者らの考えや今後の展望


同研究の論文には「犬の散歩が思春期の子供の幸福度を上げているのではないか」とも考察されています。犬を飼うと青少年の活動時間は7~8%増え肥満防止も期待できると書かれています。

研究者の麻生大学の茂木一孝教授は、「犬を飼うと人同士のコミュニケーションが円滑になる。このことが今回の研究結果の一因ではないか」と話します。

また同大学の菊水健史教授は「オキシトシンが関係している」と述べます。犬を飼うことでオキシトシンが増え、社会とのつながりを増やし、ストレスを減らす可能性があるそうです。

研究者らは犬の飼育は思春期に多いいじめ・不登校・摂食障害などの改善に期待を寄せています。今後も調査を続け行動学や内分泌学的にもくわしく解明する予定だそうです。

参考:
https://www.mdpi.com/1660-4601/17/3/884

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